もう一度見上げると、今度は柔らかな唇が降ってきた。
「……ん」
最初は短く……
ついばむような キス。
鼻の頭が擦れる感じがして
角度を変えて唇が深く重なる。
……そしてもう一度。
確かめるような 少し長くて優しいキス。
慶介は決まって、こうしてくれる。
それだけで、あたしは骨抜きにされちゃうんだ。
そう、いつものこと。
そして、今日も……
溶けちゃいそうなあたしを見て、口の端をキュッと上げて笑う慶介は最後にチュっとおでこにキスを落とす。
うん。 これでおしまい。
―――いつも。
「…………」
足りないよ……これだけじゃ全然足りない。
慶介のキスは、いつもその先をあたしに期待させるんだ。
「……明日で最後だし、今日は早く寝るか。それともなにか飲む?」
「…………」
あたしの頭に優しく手を乗せて、撫で撫でをする慶介。
腕を腰に回されたまま、あたしはまたグッと唇を噛締める。
はっきりしないあたしの態度に、慶介は「さっきからどうしたんだよ」と上目使いであたしの顔を覗き込んだ。
無造作に下ろされた前髪の隙間から覗く、少し茶色がかった瞳と視線がぶつかった。
も、もう……ダメかも。
「言えないこと?」
「……うぅ…だっ…だってぇ」
抑えていた感情が、慶介のその言葉をきっかけに堰を切ったように溢れ出した。



