少し顎を上げて、あたしを見下ろす慶介のその表情が、いつもより挑発的に見える。
ど……どうしよう?
これってどうすればいいの?
もっと……あたし積極的になってもいいのかな?
「どうしたんだよ?」
「……」
下唇をキュッと噛締めて、あたしはゴクリと唾を飲み込んだ。
うんん、唾なんてとっくにどこかへ行ってしまった。
もう口の中はカラカラの砂漠状態だ。
瞬きも忘れるくらい、慶介を見つめたままのあたしの瞳はもうウルウル。
口は砂漠。 瞳はウルウル。
なにしてんだ? ……あたしは。
もうダメだ……
やっぱり熱い視線だけじゃ想いは伝わらないか。
眉をしかめた慶介から視線を落とすと、一気に脱力感に襲われた。
「はぁー」
目の前の慶介から、深い溜息が聞こえた。
それと同時に、あたしは自然な力で慶介の大きな腕の中にすっぽりとおさまってしまっていた。
……え?
もしかして……
もしかしなくても、伝わった。とか?
腕の中から、慶介を見上げる。
見上げた先には、眉間にシワを寄せてなんとも複雑な表情をした慶介と目が合った。
「……その目は反則。 だな」
「……え」
そう言って、照れくさそうにもう一度あたしの顔を自分の胸に押し付けた慶介。
石鹸の甘い香りに包まれて。
Tシャツの上からでもわかる、筋肉質な胸板。
押し当てられた左の頬には、愛おしくて優しい温もりがした。
まるで体の奥の方から出てくるみたいに
あたしはこの言葉を口にした。
「……慶介…大好き」
「……うん」
「……」
そう言って、あたしは“期待”してたんだ。
きっと、彼も言ってくれるんじゃないかって。
彼の口から。



