あたし達の前を、悠然と歩く姿。


彼女を初めて見る人は、きっと“勝気で生意気そう”と思うだろう。


たしかに、あたしもそうだった。




でも、本当は好きな人を一途に想える心のあったかい人なんだ。
その笑顔も、明るさも……きっとまわりの人を思ってなんだ。

だけど、それに気づいてあげているのは。



きっとこの世界にただ1人だけ。





「あ! そう言えばさぁ、アツシってウクレレ持ってたよね?
もうすぐフェスティバルがあるよね~。どんなイベントなのかな?気になるな~。
ってかアツシってなんでそんな色んな楽器できちゃうわけ!?
 ほんと、偏った世の中よね~」


「……」


ビーチの前の通りを歩きながらのショッピング。

なぜかそのまま、昌さん達も一緒にいるんだけど……



さっきから、彼女の弾丸トークが止まりません。




一体どこからそんなパワーが出てくるのか。

あたし達は、彼女の後ろをついて歩きながら、相槌をうつので精一杯なのだ。
時々、慶介と目を合わせては苦笑いをするくらいで。



でも、もっと気になってるのは。
さらに後ろを歩く、アツシ君の姿。



押し黙ったまま一言も口を利かない彼。



怒って……るのかな?




「―――昌」




ニコニコと上機嫌の彼女の名前を呼ぶ、アツシ君の声はワンオクターブ低くて明らかに怒っている。

でも、アツシ君の声なんか全然聞こえないといった様子の昌さんは、鼻唄混じりでお店に並んだウクレレを物色している。


……聞こえてないはずないんだけど?



二人のただならぬ雰囲気に、あたしの方がヒヤヒヤしちゃう。


うぅ……昌さぁ~ん




振り返ると、眉間にシワを寄せたアツシ君が、昌さんをジッと見据えていた。

いつも穏やかな彼。


いつまでたっても聞こえないふりをする昌さんに向かって、アツシ君は大きく息を吐くとその手を伸ばした。




「昌! こっち向けよ!」

「……」