デッキから船内へ入り、ようやく船を包む賑やかな音楽に包まれた。

各会場でも、ショーなどのエンターテイメントが行われているようだ。


アツシ君はなぜか慣れた様子で船の中を歩く。

この船でなにかやってたのかな?


そう思っていた時、慶介が立ち止まった。


「どうしたの?」

「葵… カメラどうした?」

「え?…あ、あれ?」


あたしは手首に吊るしていたはずのカメラがない事に初めて気づいた。


どうしよう… どこに…… あ。さっきのデッキ?



「ここにいて。 ちょっと見てくるから」


「えッ、あたしも行くよ!」



慶介は、一瞬考えるように瞬きを2度ほどして、アツシ君に視線を移した。



「……ちょっとだけ葵の事頼んでもいいか?」


「え?あ…はい。 それじゃここにいます」



慶介は、アツシ君にそう言うと「すぐに戻る」と言って来た道を戻っていった。


……慶介ぇ

不安なんですけど。



あたしは、すでに消えてしまった慶介の背中を追いながら唇を噛締めた。



…ほんと あたしってドジ。

また呆れられたかな。


「はあ……」


自然と溜息が零れた。





「でも、驚いたよ。 まさかこんな所で会うなんて」


「え?」