「きゃーッ! 今 何時!?」


「え?……5時45分…」


少し目を丸くして体を起こした慶介は腕時計に視線を移して言った。



5時45分!!?

最悪ぅぅうう!!! あたしのバカぁぁ!!!



「うわぁんッ 時間がないよぉぉ」



この日の為に日本でわざわざ買ったサテンのワンピースを、クローゼットから引っ張り出すと、それをベッドに放り投げた。

勢い余って、慶介の顔をかすめたワンピは難なくキャッチされる。



「ごめん。 寝顔が可愛すぎて起こせなかった」


「えぇッ!?」



あたしの慌てようを見て、慶介はそんなセリフを穿きながら「あはは」と笑った。

来ているTシャツが脱げなくなって、あたしはそのまま固まってしまう。



「もぉ…慶介ぇ…」


「だから悪かったよ」



無邪気な笑顔を見せる慶介。
 
…起こさなかった事に対して謝ってますね?
でも、違うから!!




『寝顔がかわいい』なんて…

そんな事簡単に言わないでよぉ…
あたしは赤い顔を隠しながら、ワンピースに腕を通す。


体にフィットするワンピをあたしは初めて買った。
少しだけ背伸びをしてみたんだ。


慶介に見せるのはこれが初めて。



かわいいって…言ってくれるかな?


そんな事を思いながら親友の美羽を連れ出して買った物。


うッ…なんで?
なに…これ…!?


いつまでもモタモタしているあたしを見て、慶介は見かねて声をかけた。



「…手伝う?」

「……お願いします」



かっこ悪い…
ファスナーくらい上げれなくてどうすんのよぉ。


あたしはベッドに腰掛けていた慶介の前まで行くと背中を向けて、やっと胸まで伸びた髪を掻き上げた。


慶介の手が、ワンピースに触れたのがわかる。



ドキン…


うぅ…恥ずかしい……