ドール・プランテーションを後にしたあたし達は、海岸線を通ってホノルルへ戻る途中だ。


オアフ島を西から東へ縦断すると結構かかるんだな……。
太陽はすでに西に傾いていた。




昌さんと言えば、さっきまでのテンションの高さはどこかへ消え、どこまでも続く碧い海を眺めている。


その横顔は儚げで……すごく寂しそうに見えた。


きっと…婚約者の事を考えているんだろう。
アツシ君へ視線を移すと、彼はそんな昌さんを見つめていた。





恋って…うまくいかないな………


相手が自分を好きになるって、本当にすごく奇跡的な確率なんだ。


あたしは、運転席の慶介を見上げた。



慶介は、開け放った窓に肘をかけて、リラックスした姿勢でハンドルを握っている。

黒髪がサラサラと風に揺れていて、強い陽射しを避けるためのサングラスで、まるで知らない人のようだ。



あたしの視線に気づいた慶介は、チラリとこちらを見た。
口角をキュッと上げて、いつもの笑みを浮かべてみせた。

あたしもそれに応えるように、にっこりと微笑んだ。



あたしが、こうして慶介に出会えたのも運命なんだな……







慶介の運転する車は、いつの間にか見覚えのあるホノルル市内に入っていた。


「楽しかった。 ハワイで素敵な思い出で来たよ。 今日はありがとうね」


そう言った昌さんの笑顔に、いつもの元気がないのはすぐにわかった。
隣りで、その言葉を聞くアツシ君は昌さんの顔を苦しそうに見つめた。


「あたし達、明日で日本に帰るんだ。 だからきっと…今日で会うの最後だね」

「…明日には…帰っちゃうんですか?」

「…そ。 せっかくのハネムーンの邪魔しちゃってごめんね」




そっか……

それで、昌さん……



『ここで会えなかったら 諦める』




明日でタイム・オーバー。








「………」



そしてあたし達は、ホテルのロビーで別れた。