ブンブンと大袈裟に手を振る昌さんの隣で、見た事のないくらい疲れきった慶介。



うわぁ……


大丈夫かな?



もうほとんど引きずられるように歩く慶介に同情しちゃう。

きっと、迷路の中でもあの調子だったんだろうな。



「葵ちゃん、慶介君って実は無口なんだね」


「はあ… 実は?」




そう言って、満面の笑みを浮かべる昌さんを見上げた。
昌さんは一体どうゆうイメージで慶介を見てるんだろうか。


さっき、アツシ君が言っていた“慶介似”の彼とダブらせてるのかな?



なんだかそう思うと、さっきまでの醜い感情とは少し違う気持ちがあたしの中に生まれた。



このハワイで会えなかったら……


会えるといいな…昌さん。



どんな結果が待っているかなんて、きっと彼女には関係ないんだ。



ただ 彼に会いたい。


その顔が見たい。



その気持ちは、あたしにも痛いくらいわかるから……








「はあ」


すぐ傍で大きな溜息が聞こえて、あたしは顔を上げた。
見上げると、慶介が目頭を手で押さえている所だった。

あたしはなんだかその光景がおかしくて、慶介がこんな疲れた顔をしたのを見るのは初めてで……

笑いを堪えながら、声をかけた。



「大丈夫?」


「んー…? …大丈夫…じゃない」



そう言って、手の隙間からあたしの顔をチラリと見た慶介。


…え?






その瞬間―――……


背中に感じる重み。




「ちょっと 充電」



そう言って、あたしを背後から抱き締めた。



ドキン…


ドキン…ドキン…



もう。
慶介って…時々こうしてあたしを惑わすんだから……



あたしは、前を歩く昌さん達に視線を送りながら、回された筋肉質の腕に手を伸ばした。