「…さっきから、謝ってばっかりだね。 ってゆーか、昌さん…いいの?」




そうだよ。アツシ君だってこれでいいはずがない。

付き合ってる自分じゃなくて、他の男を連れまわしてるんだから。

…平気で慶介の体に触れちゃうし。

今だって、なぜかあたし達はここにいて、2人は迷路に入って行ってしまった。






「2人…付き合ってるんでしょ?」



あたしの質問に、アツシ君は黙って手元のコップを見つめている。

暫く何かを考え込んでいた彼は、
「違うんだ…」
と言いながら、ベンチの背に身を預けた。



「俺達、付き合ってなんかいないんだ」


「え?」




そう言ったアツシ君の顔が曇ったのがわかった。


見てればわかる。

アツシ君が、昌さんの事を『好き』だって…。



でも…ならどうして、2人は一緒に旅行してるんだろう。


昌さんは各国を回ってるって言ってた。

付き合ってもいない2人が、長期旅行を共にするんだろうか?


そんなあたしの疑問がわかったのか、アツシ君は苦笑いをして短い髪をくしゃっと触った。



「昌の旅行に…俺が勝手に付いて来ちゃったんだよ。 昌は嫌がってたけどね。 1人にするのが心配だったんだ。
彼女……最近 いい事なかったから」




そう言って、アツシ君は2人の事をゆっくり話てくれた。



昌さんの事も……