「葵ちゃん、せっかくだから…」
そう言って、優しく笑ったのはアツシ君だった。
『せっかく』って……なによ!!
あたし達、新婚旅行なんだよ?
『せっかく』なら、アツシさんと昌さんには邪魔をして欲しくないよ。
「ほらほらぁ」
昌さんがあたしの背中を強引に押して、慶介の隣まで連れてきた。
「はい、撮るよー」
アツシ君の声に、あたしは素直に笑えない。
昌さん、慶介、そしてあたし。
この組み合わせ…一体なによ…。
唇を尖らせて、納得いかない表情のあたし。
その時、不意に背中に温もりを感じた。
見上げると、あたしに視線を落とす慶介と目が合う。
背中の温もりは、今はあたしの肩をしっかり抱いていた。
優しくて、力強い…慶介の腕。
あたしを見つめるその瞳が……
―心配するな―
そう言ってる気がした。
有名なビーチを後にして、あたし達はオアフ島を西へ向かった。
Hー2号線を進むと、ドール・プランテーションに到着した。
ここは、パイナップル農園だ。
大きな畑で、パイナップルを収穫体験なんかが出来る。
日本人の観光客も多く、色んな体験をやっていた。
いわば、テーマパークのようなものだ。
「あぁ!!これッ! これやってみようよッ」
テンションがさっきから高い昌さん……
あたし達…置いてけぼりなんですけど?
彼女が指したのは、最近ギネスにも登録された世界最大級の巨大迷路。
パイナップル畑を迷路に見立ててあるんだ。