ハッピー☆ハネムーン


ラジオからは、陽気なハワイアンミュージック。

車内は、それとは裏腹に微妙な雰囲気。



何も言わず、運転に集中する慶介。




逃げてる…絶対… 面倒だって思ってる。


あたしは、恨めしげにルームミラーに映る慶介を見た。




「葵…ちゃん?」




不意に名前を呼ばれ、声のした方へ顔を上げた。



「君たち結婚したって言ったけど……ごめんね、月島って名前?」


彼は、そう言うと真っ直ぐにあたしを見つめた。
その少し茶色かかった瞳に、なんだか落ち着かない気分になる。



「…違いますけど」

「そっか。 …身近な人にそんな名前の人はいないよね?」

「…いない…と思います」



一体なんなんだ。


その『ツキシマ』って人は。



不思議そうに首を傾げたあたしに、彼は慌てて笑顔を作った。



「ならいいんだ、ありがとう。俺、アツシ。 …それと敬語は使わないで。」



そう言うと「自己紹介遅れてごめんね」とも言った。


なんだか納得いかなかったけど、それ以上聞いてはいけない気がした。










「着いたぞ」



いつの間にか、車はある場所に来ていた。
そう言って、さっさと車を降りてしまった慶介を慌てて追う。


たくさんの駐車スペースの中に、車が何台も停まっている。



「…うわぁ」



石垣の先に見えた景色に、あたしは思わず息を呑んだ。