ホテルの部屋に入っても、あたしは意識しまくってた。
慶介はソファに腰を下ろし、テレビのリモコンをいじってる。
あたしは、そんな慶介を横目で見ながら、キャリーバッグを開けて荷物を整理した。
実は…
実はね…?
結婚したあたし達だけど…
慶介…あたしを抱こうとしないんだよね。
…お…おかしいかな?
ほんとに、今まで数回。
そりゃあ、キスはするよ?
甘くてとろけちゃうようなキスを…。
3年間、付き合ってきたけど…
求められる事も滅多になく…
あたしって…魅力ないのかな?
なんて自暴自棄にもなったりして。
だから、このハワイ旅行。
あたしにとっては“素直になるチャンス”でもあるわけ。
あたしはもっと慶介にかまってもらいたいし、
求めて欲しい。
こんな事言ったら嫌われるような気がして……
結婚したんだし大丈夫!!
…って勝手に自分に言い聞かせても、あえて自分から誘うなんて…
無理無理!!
そんな事出来ないから!!!
「…最悪」
「へ!?」
や…やや…やだ!!!
あたしってば気づかないうちに声出してた!?
冷や汗が噴き出すのを感じながら、あたしは慶介を見た。
うわぁぁあん 絶対嫌われた~~!!!
すがるような気持ちで見た慶介は……
「なに?」と顔を上げた。
「…あ…あれ?…なんでもない」
「…そう?」
一瞬首を傾げた慶介は、また自分の手元に視線を落とした。
その視線の先には缶ビール…でわなく缶ジュース。
なんだか苦々しい顔をした慶介は、そのジュースに口をつけた。
あ…。
もしかしてビールと思って開けたら、ジュースだったから…の“最悪”?
なぁんだ……
慶介って…慶介って……
「ぶッ」
「さっきからなんだよ」
抑えきれなくて思わず吹き出したあたしを見て、慶介は眉間にシワを寄せてゴクリと喉を鳴らした。