カラカウア大通り―と呼ばれているワイキキ・ビーチに面した歩道を歩く。

波の音と、2人の足音。





ほとんど人がいなくなった通りを、なんだか貸切にしてしまったような気分になる。


あたしは、ちょっとだけ照れくさくなって歩くスピードを緩めた。




風に乗って、前を歩く慶介の優しい香りがあたしを包んだ。
ほんの少しの煙草の匂いと一緒に。




ただそれだけなのに、泣きたい程胸が苦しくなった。




あたしは、唇を噛締めて夜空を見上げた。


「わあ…」



すごい…

息を飲む程の――… 星。
まるで、星のシャワーが降り注いで来るようだ。

東京では見れないような星の群れに、あたしは溜息を零した。


ほんの少しの事で、ここは日本じゃないと実感する。




空から静かな海へ視線を移す。

綺麗な青…

海は真っ暗なはずなのに、月に照らされて青く輝いている。







――ザザァァアアン

―ザアァアン



波の音があたしの鼓動とリンクしていくような気がした。






「疲れたのか?」



海を眺めていると、慶介がすぐ傍へ来て、あたしの顔を覗き込んだ。



「…え……あ…」



あたしは、慶介から視線がそらせなくなった。

だって……







「あぁ わかった。眠くなったんだな。 もうこんな時間だもんな」




そう言って、少し悪戯に微笑む慶介。

またあたしの事子供扱いしてる…


「違うもーん」




そう言って、少し頬を膨らませたあたしは、やっぱりまだまだ子供だ。

でも、悔しいから絶対言ってやんない。






“慶介の瞳の中に星達が見えた”



……なんて。