ハワイには、冬と夏の気温差がほとんどない。
乾季と雨季に分かれていて、今は丁度乾季。
つまり、夏真っ盛り。
夏と言っても、日本みたいに肌にじっとりと纏わりつくような暑さではない。
夜になっても風は気持ちがいい。
「今日はありがとう!本当に楽しかった。 良い旅をね。じゃあ」
お店を出ると、昌さんはそう言って風のように夜のハワイへ消えて行った。
あたしは、昌さんの去って行った方をぼんやりと眺めながら、なんだか不思議な感覚に襲われた。
なんだか引っかかる…。
それが何かわからずにあたしは、少しだけ首を捻った。
「葵? どうした?」
その声に振り返ると、少し先で慶介があたしを待っていた。
慌てて、その背中を追う。
慶介の背中を見つめながら、心の中に残った小さな“ギモン”。
……まあ いっか。
きっと、もう会うこともないんだろうな。
あたしは、ハワイでの出会いを思ってもう一度だけ彼女を振り返った。



