声のした方へ視線を送って、あたしは自分を疑った。


だって…

だってね……?



「やっぱりそうかなと思ったんだけど…あなた達さっき“ロココ・イエロー”にいたでしょ?」



そう言いながら、キラキラと笑顔を振りまいて確実にあたし達に近づいてくる女性。



え?

誰?

誰の事?



あたしは、キョロキョロと視線を泳がせる。



「あんなローカルな場所にいる日本人だから、すごく気になってたんだ。
―――旅行…だよね?」



目の前に立ち止まり、あたしと慶介を交互に見てにっこり笑う。




「え…え!?」


「うふふ」



意味がわからず、思わず挙動不審になるあたしを見て楽しそうに笑う、この人は…。



「君は…さっきピアノを弾いてた子?」


「イエーッス!!」




…YES!!?

慶介の言葉に、彼女は両手でピースサインを作った。
そうだ、目に付いて離れなかった“ピアノの彼女”だ。
黒のショートカットがよく似合う彼女。
その彼女がなぜか目の前で笑ってる。



なんだか、あのお店にいた彼女とは印象がだいぶ違って戸惑った。


ピアノを弾く姿。

それは儚くて…可憐な少女のようでもあった。

力強いくて、かつ繊細なタッチは色気さえ感じたのに…


今、目の前にいるのは……



可憐な少女でも……儚げな妖艶な女性でもない…



「ここで会えたのもなんかの縁だね。おっしゃあ!一緒に飲もー!!」


「「えぇ!?」」



GOING MY WAY


慶介との間に割って入ってきた彼女は、あたしの肩をしっかり掴み「チン」なんてグラスを合わせる。




「カンパーイ」




な…な…なんでぇぇえええ!!?