車に乗り込み

振り返る。

さっきまでふたり
繋がっていた手を振って
車は走りだす。


明け方の白い街は
ただ静かで
ただ何事もなく

騒ぐ私の心とは
まるで逆だった。


過ぎてしまった思い出を
ひとつひとつ
取り出しては
大人気ないと
情けなくも愛しい。


また
触れられるのかな。
指の先でさえ
一瞬でも。


窓の外を
ぼんやり見ては
この先の二人を願ってる。

ほんとうに
落ちていく

熱さに
心奪われる

痛みに
からだが痺れてゆく


この偶然の奇跡を
あたながつくった
必然だったと
信じていいかな。


春の頃
桜は私たちをそっと
受け入れてくれるかな。



ただひとつ
私の罪を残して。