あなたから
手を離す

些細な仕草で
心は動く
うるさいほどに


あなたから離れるために
待つ
タクシー乗り場で
願うことはひとつ。

まだ一台も来ないね

なんて
言わないで。


ちいさくあなたを見て

この時間が
夢じゃないことを確かめる。

明けていく夜を
二人でむかえたこと
いま
わたしのからだが覚えていく。

忘れないで
忘れないで
忘れないで

あの歩道を
街灯の眩しさを
かかとの音を
冬のにおいを
ふたりの白い息を
手の温かさを


急な光に
思わず目を細めて

その一台の
ドアが開く。