「ねえ…沙織さん、相談なんだけどー」

「珍しいね…有香ちゃんが相談なんて…」

「んー…あのね、心臓がキューってするのって病気?」

沙織さんは、あたしの話をちゃんと聞いてくれた。

じっくり聞いてくれた。

「それはさー…心臓の病気じゃなくて、恋だねっ!」

沙織さんは、スッゴい笑顔で言った。

恋……?

あたしが、ボーッとしていると

「えっ?何、何?」

「あーいや…ちょっと、気になっただけ」

あたしは、自分の部屋に戻って考えた。

あたしが…

恋?

剛に?

あり得ない……

でも……

『ガラッ』

部屋に入ってきたのは

剛だった。

「わりぃ…昨日はさ…」

えっ…?

「ちょっと、イライラしちゃってて…」

そう剛は言った。

「ごめん…あたしこそ……」

あたしは、涙を流していた。

生まれて初めて

涙を流した。

親の前ですら流したことのない涙。

剛は、その涙を拭いてくれた。

何も言わずに

ただ…拭いてくれたんだ。