おいてきぼりのピエロ


訳わかんない。
こんな奴、初めてだ。


『まじ接客業なめてますよね』
『んなことないよ。俺なりの最高のおもてなし♪』


なんだ、こいつ。
…面白いじゃん。


『じゃあ、最高の接客をしてくれたマスターにビール』
『マスターじゃねえよ』
『ん?』


『槙』

まき。


『まき?』
『俺の名前』
『まきっていうんや』
『呼び捨てかよっ。ま、どっちでもいいけど』
『じゃ、槙さん』
『うぃー』
『やる気ないなっ』



コツン、と硝子の繊細な音が響く。
小さなグラスを、わたしのショットグラスに触れさせた。
『お酌していただいていいっすか?』
『てか、瓶っすか』
『俺ビールは生より瓶派!』
『ふつー生っしょ!』
『これだからガキは…』
大袈裟にため息をつく槙さん。

『そのガキにアルコール出してんの、槙さん』
『俺、ダメな子やけんいいと♪』

そんな会話を交わしながら片手でお酌をした。
『てかっ!片手でお酌するとか礼儀がなってねえ!』