おいてきぼりのピエロ


そういえば、大好きだったな、槙さんのこと。

大学に入学したばかりの時だ。
なんとなく、独りになりたくて。
でも、家には帰りたくなくて。
たまたま見つけたカフェバー。

小さいお店で、全く人気のなさげな、いつもなら入らないようなお店。


今まで、出会ったことないタイプの人間だった。








『ジントニック』
なんとなく憂鬱で、呑みたい気分だった。
『お姉ちゃんジントニックよりいいの作ってあげるよ』
『や、いいです。ジントニック作ってください』
『酔いたい気分なんやろ?』
…、顔に出るほど呑みたそうな雰囲気なのか?


『んー、じゃあ任せるわ』
『了解♪』


出てきたのは小さなショットグラス。
中には並々に注がれた透明な液体。
『…なにこれ』
『呑んでみればわかるよ♪』