愛しい遺書

計5曲の歌を全部通して3回梅さんと合わせた。3回目のリハの終盤に、今日の主催者であるグループを始め、続々と他のグループも入って来た。リハそっちのけであたしの携帯の番号を聞きに来る男が何人かいたが、あたしは愛想良く笑って流した。

スタッフルームでメイクを直し、一服していると、フミカさんとたろーが出勤してきた。少し送れて週末だけ入るアルバイトのヒトミちゃんと辰くんも出勤してきた。あたしたちは少しだけお喋りした後、店内に戻った。

カオリさんは皆と交代に帰って、あたしとたろーは入口の受付用テーブルに座り、他のスタッフはカウンターに入った。

午後9時。今日はパーティーの為、1時間遅れてLove・Mania開店。

店が開くのを待っていた客たちが続々と入って来て、たろーが一人ずつ身分証明を確認すると、チケット代を貰い、あたしは会計済の客にチケットを渡し、パスとなる店のスタンプを手の甲や肩など、客の好きな所に押した。第一陣を手際よくこなすと少しの間暇になり、ぽつりぽつりと入って来る客の中に、マナカと梗平、そして翔士が入って来た。

「キキ!」

そう言ってマナカはハグしてきた。調子に乗って梗平もハグしてきて、あたしは笑った。

「空気読んでよねっ」

マナカは翔士の肩をポンポンと叩きながら言った。

「マジでか……」

そう言いながら翔士は恥ずかしそうにハグしてきた。あたしは笑いながらハグしかえしたが、翔士の緊張が伝わって来て、あたしまでドキドキしてしまった。

マナカたちはスタッフ用パスで好きな酒を注文すると、あたしの側まで戻ってきた。

「カンパーイ!」

マナカが音頭をとり、3人でグラスを合わせた。

「何時から歌うの?」

煙草に火を付けながらマナカは言った。

「10時だから……そろそろ?」

「もうすぐじゃん」

そう言いながらマナカはあたしの耳元に口を寄せた。

「あいつは……?やっぱり来るの?」

あたしは頷いた。マナカは半分冗談、半分本気で舌打ちをした。あたしは笑うしかなかった。