愛しい遺書

あたしは予め圧力鍋で多めに煮ておいたジャガイモを潰し、冷やしておいたものでポテトサラダを作った。

その間翔士は皿にご飯を盛り、カレーをかけてカウンターに上げた。

あたしは新鮮に感じていた。

明生と一緒の時は、あたしがご飯を作るのが当たり前で、それを美味しそうに食べてくれる明生を見るだけで満足だった。

なのに2人でお喋りしながら役割分担して料理をする。

あたしが次やろうとしている事を、翔士が先に感じ取ってくれる。

翔士を例えるなら、痒い所に手が届く人。

あたしはこういうのも悪くないと感じ始めていた。

サラダを作り終え、カウンターに上げると翔士の隣に座った。

「いただきます」

翔士が手を合わせて言うから、あたしもつられて手を合わせて「いただきます」と言った。

「旨い!」と言いながら勢い良く食べ、おかわりする翔士に、あたしは一瞬胸がキュンとした。

翔士に裏の顔があるわけない。

あたしは翔士の肩に這いつくばっている鱗を思い出したが、あれは趣味で入れてるのだと思う事にした。

食事を済ませ、2人で後片付けをして時計を見ると午後1時。

翔士は一服すると、

「そろそろ帰っかな」

と立ち上がった。

あたしも立ち上がると翔士の後ろをついて、玄関まで歩いた。

ティンバーを履き、あたしの方を向いた翔士に

「楽しかった」

と、あたしの口から自然とこぼれた。

翔士は少しはにかんで、

「オレも楽しかった」

と言った。

「キキ……」

「ん?」

「……ハグしていい?」

恥ずかしそうに言う翔士に、あたしは微笑みながら頷いた。

翔士はあたしを力を込めて抱いた。

あたしも翔の背中に腕を回した。

「また夜な」

耳元で囁く翔士に、

「うん。またね」

と返した。

別れを惜しむように抱く翔士の腕は更に力強くあたしを包んだ。

「……このまま押し倒してしまいてぇ……」

ストレートに言う翔士に、あたしは笑って誤魔化すことしか出来なかった。

翔士はゆっくり離れると、

「じゃあな」

と言って玄関のドアを開けた。

あたしは手を振って見送った。