愛しい遺書

「コイツ普段料理しなそー」

翔士は冷やかし気味に言った。でも、下手な包丁さばきで切ったゴロゴロとした大きな野菜が逆に美味しそうに見えた。

「なんか、段々旨そうに見えてきた」

あたしが思っている事を、翔士が口にした。

「作ろっか?カレー」

「あるの?」

「夏野菜はないけど、カレーのルーならあるし、冷蔵庫に入ってる材料でよければ」

「マジで!?」

翔士は子供のような表情を見せた。

あたしはキッチンに行き、エプロンをして手を洗った。

「オレも手伝う」

そう言って翔士もキッチンに入ってきた。

「できんの?」

「一人暮らしだからって、外食ばっかしてられねぇしな」

手を洗いながら翔士は言った。あたしはエプロンをもう一枚出し、翔士に渡した。

「なんか、ボディコンみたいじゃね?」

さすが女物のエプロンだけあって、翔士の体には小さ過ぎた。そんな姿があたしには可愛く見えた。

米をとぎ、炊飯ジャーにスイッチを入れると、カレーの下ごしらえを始めた。さっきのアナウンサーに影響されたあたしたちは、分担して切ることにした野菜をわざと大きく、ゴロゴロに切った。

圧力鍋に野菜を入れ、煮ること約10分。蓋を開けると、いい感じに火が通っていた。

「圧力鍋ってすげーな!」

翔士は興奮気味に言った。

「夜中の通販番組で買った」

「マジでか?」

「……仕事から帰って来るとさ、そういう番組しか入ってないでしょ?しかも、ああいうのって凄い!と思って見ちゃうんだよね」

あたしは鍋にルーと、我が家オリジナルの隠し味の調味料を入れた。

「わかる!んで、他にも買ったのあんの?」

「……レッグマジック」

「ああ!これだろ?」

そう言って翔士は動きの真似をした。あたしは笑いながら頷いた。

「今あんの?」

「ない。ママが遊びに来た時に、気に入っちゃって速攻持って帰っちゃった」

「そーなんだ。やってみたかったな」

翔士は残念そうに言った。

ご飯が炊き上がり、煮込んでいたカレーの香りがキッチンに広がった。