愛しい遺書

あたしはカウンターの上を片付けた。

「キキちゃん、明日の打ち合わせ何時?」

久世さんがいつもの取り巻きのお姉さんたちがオーダーしたお酒を作りながら、話し掛けてきた。

「えっと、6時半です」

「じゃあさ、今日はもう上がっていいよ。もう少しで閉店だし、3人いれば大丈夫だろ」

「じゃあ、お言葉に甘えて」

あたしはスタッフルームに荷物を取りに行き、フミカさんとたろーにこっそり挨拶すると店を出た。

歩きながら携帯をチェックすると、翔士から着信があった。履歴を見ると1時30分。まだそれほど経ってない。あたしは電話をしてみた。

コール2回目。

「もしもし」

翔士は出た。

「キキ。」

「うん。仕事中だった?」

「ううん。明日打ち合わせで早く店入るから、今日は早く上がらせてもらった」

「マジで?梗平に今日誘われたんだけど、用あってさ……。今ヒマんなったから、どうしてるかなと思って……勝手に店に向かってた」

「そーなの?でも今、家に向かってた」

「そっか……」

「場所わかるの?」

「梗平から聞いたから、だいたいは……」

「じゃあさ、店からあたしん家の間にローソンあるから、あたしそこにいるね」

「ああ、わかった」

電話を切ると、あたしはローソンに向かった。中に入ってコーヒーを2本買うと、雑誌のコーナーで立ち読みしながら翔士を待った。10分ほど経った頃、駐車場に見覚えのあるBMWが入って来た。

翔士だ。

あたしは読んでいた本を元の場所に戻し、店を出た。手を振りながら車に近づくと、翔士ははにかんだ表情を見せた。助手席のドアを開けて乗り込むと、

「久しぶり」

と翔士が言った。あたしもさっき買ったコーヒーを1本渡しながら、

「久しぶり」

と返した。翔士は「どーも」と言ってコーヒーを受け取った後も、暫くあたしを見てた。

「……なんか付いてる?」

あたしはバッグから鏡を取ろうとすると、

「いや……やっと会えたと思ったら、雰囲気変わってるから……可愛いなと思って」

と、コーヒーのプルタブを開けながら言った。