愛しい遺書

「キキ、楽しんでる?」

用を足した後、マナカが化粧を直しながら聞いてきた。

「うん。楽しいよ。マナカはどう?気になるヤツいる?」

「うん!あたしキョウヘイめっちゃタイプだし!!」

「……そんな気がした」

「アハ!やっぱり!?キキは?」

「うーん…あたしは……」

「ショウジ!キキにばっかり話しかけてるよね?絶対気があるって!!」

「そうかなぁ……」

「そうだって!!」

そんなやり取りをしてると一気に5人のギャルが固まって入ってきた。それが合図のように、あたしたちはトイレから出た。

「ねえ、キキ。もし今日キョウヘイと上手くいったら2人で帰ってもいい?」

「いいよ。頑張りな」

「ありがと!キキはどうする?」

「あたしは適当にタクシー拾って帰るよ」

「そんな事言わないでさあ〜、ショウジに送ってもらうとかさ?」

「まあね、盛り上がったらね」

「よし!!キキも頑張れ!」

そう言ってマナカはあたしの背中をポンポンと叩いた。


トイレでのレディの相談タイム=メンズの相談タイム。席に戻るとメンズはテーブルを挟んで2対2に分かれ、頭を寄せて話していた。

「お待たせー!!」

マナカがテンション上げ上げでテーブルに着くと同時に、ホールには上げ上げなイヴの曲が流れた。

「あたしこの曲大好き!!踊りに行こー!!」

マナカが嬉しそうに言った。

「んじゃ、オレらも行くか!!」

そう言ってメンズも4人立ち上がり、あたしたちはホールに下りた。

深夜2時。ダンスホールで踊る人たちがすし詰め状態になっていた。そこへあたしたち6人も割り込んだ。最初はマナカとあたし、はぐれないように手を繋いで踊っていたが、自然に離れてマナカはキョウヘイと、あたしはカイとケンタ3人で踊っていた。

いい感じで曲に乗って踊っていたのに、すぐ後ろで激しく絡み合って踊っているカップルがぶつかってきて、あたしは驚いて2人の方を見たが、2人は自分らの世界に入り込んでいて、あたしにぶつかった事に気付いてない。少しイラッと来た。

「あたしちょっと休憩!」

「オレらも行こうか?」

「大丈夫!すぐ戻ってくる!」