息子の部屋をノックする。 「健人、ドア開けていいかしら。」 未だ十歳の息子にとっては少し酷な話になるだろう。 「分かってるよ。離婚したんでしょ?全然平気だから。それにもう俺寝るし。」 ドア一枚隔てた健人の声。 明らかに震えている。 「そう…ごめんなさいね。ゆっくり休みなさい。」 私はどうしてこういう時に気の利いた言葉を懸けてあげられないのだらう。 冷淡すぎるかしら。 これからは 「シングルマザー」 として一人で健人を立派に育てなければならない。