「ねぇ…お母さん?」
「ん?」
お母さんは、鍋を見たまま返事をする。
「その家庭教師は…男?女?どっち?」
女の先生ならいいな。
男の先生はイヤ!
「さぁ?どっちが来るかわかんない」
はぁ?
冗談じゃないわよ!
「何でわかんないの?」
少しきつめの口調で言う。
「だって、どっちがいいか聞かれなかったし…。あっ!でも名前は教えてくれたわよ。え~とねぇ…確か…"ふくやま"って言ったかな?」
どっちがいいか聞かれないのに、
どうして名前は教えてくれるのよ!
どんなとこで頼んだんだか…。
てか、名字だけ聞いてもしょうがないじゃん。
肝心なのは下の名前なんだから。
「下の名前は?」
私はカウンターから身を乗り出すようにして聞いた。
「確か…"はるか"だったかな…」
"はるか"…。
女の先生で間違いないよね。
良かったぁ。
私は、女の先生とわかって安心して自分の部屋に行った。



