「あ、どうも。」



上着を受け取ったのはいいものの、これってブランド物だよね。数十万する?



私が上着を持ったまま、迷っていると、「いいから掛けろ。そんなにパンツ見せたいか?」



早瀬係長一発殴ってよろしいですか?



それからは二人で必死だった。



スーツは汚れるわ、身体中ゴム臭くなるわ。



あ、この製品、彼女たちに任せたんだった。



後悔した。もう一度自分で確認するべきだった。



「どうした?」



私の顔を覗き込む早瀬係長。



「おまえ顔真っ黒だぞ。」


え、そう言う早瀬係長も鼻が黒い。



お互いの顔を見て吹き出した。



「この製品がどうかしたのか?」



あ、そうだ。



私は早瀬係長に話す事にした。



「この製品の検査派遣の二人に任せたんだよね。私取引先の挨拶周りがあって、どうしても抜けなくてはいけなかった。悔しいなぁ。自分でやるべきだった。」



早瀬係長が私の肩をポンと叩いた。



「おまえの責任じゃないから、気にするな。」



へっ、間抜けな声が出てしまった。