屋上の入り口の手前で聞こえた声に足を止めた。
「卓君振った事あったんだって?」
凜花…?…
屋上には凜花と、卓の片思いの相手の沙織ちゃん…
「…聞いたら…引くよ…」
「…何で…」
俺と卓は黙ってその場に立ち尽くした…
「…私…不倫してた…」
…不倫……
沙織ちゃんが、凜花に話すのを黙って聞いていた。
沙織ちゃんの過去は辛くて切ない思いが詰まった恋で。
顔を曇らせて聞いていた卓に
俺には掛ける言葉がなかった。
卓は今も沙織ちゃんが好きだからな……
沙織ちゃんが。
「終わりにした。つうか振ってやったし」
そう言って空を仰いだ時、卓の足は前に出て行って。
「なら…俺にもう一回チャンスくれない?」
そう沙織ちゃんに言った。
2人とも驚いた様子だけど、凜花は何かを察したのか卓に何か言うと、俺の元に駆け寄って来た。
卓…お前なら大丈夫だろ…
一途にずっと思ってた女なんだから。
受け止めてやれ…

