引き戸を開け、コマチを入れてから部屋に入りベッドにダイブした。
疲れで重くなった身体をぐるりと反転させ天井を見つめる。
「疲れたー」
ため息と同時に呟くだけでさらに疲れが増す気がする。
村上先生発案でタク命名の『不良撲滅運動』を開始して早5日。
階段の上り下りにこの寒さ。
いくら注意しても食い下がらない様子。
時には、殴り合い寸前。
疲れが溜まっても仕方ない。
そういえば、明日は1月最終日。
村上先生が学校を去る日。
何だかんだ言っても村上先生は、いい先生だった。
旦那さんの話をすると止まらなくなるが、生徒思いの先生で、全校生徒の名前と顔が一致するほど。
……まぁ、尊敬はできないが。
ミドリのことだから何かやるのだろう。
………罰ゲームに近いものでないといいのだが。
「ふぎゃっ!?」
村上先生との短いながらも濃い思い出に浸っていると、突然、蛙が潰れるような声をあげてしまった。
……お腹に違和感がある。
首だけを動かし自分のお腹の上を見てみると、澄ました顔のコマチが乗っているではないか。
私が一向に構わないから痺れを切らしたのだろう。
はぁー、とため息をついた後、起き上がり、コマチを膝の上に乗せ頭から背中まで撫でてやる。
「ニャー」
畜生、可愛いすぎる。
気持ちよさそうにしているコマチの顎へ手を伸ばす。
「今日、タツキ帰ってくるの遅いんだって」
「ニャァ?」
ひょっとすると、コマチって頭が良いのか?
度々思うのだが、私が話し掛けると必ずといっていいほど返事をする。
………不機嫌な日以外だが。

