「馬鹿じゃねぇの?」
私の行動を嘲笑い、自分に向けられた傘を掴みグイッと引っ張った。
「なっ?!」
スポッと手からすりぬけた傘は、啓輔の手に握られている。
「俺に傘で勝てると思ってんのか」
「あーっ!もうっ!めんどくさいわね!
正直に答えなさいねっ!?」
冷たい空気をおもいっきり吸い込み肺に溜め込む。
体内で温かくなった息を吐き出しながら、
「………煙草吸ってるの?吸ってないの?どっちなのっ!?」
直球で問い掛けた。
そんな私の様子からなのか、啓輔は「るせぇな…」と呟きながら、濃い紺色のズボン、左ポケットから煙草の箱を取り出し、私に差し出す。
「……で?」
「は?“で?”じゃねぇよ!」
「なんか言えないわけ?
『もう吸いません』とか『煙草は二十歳になってからにします』とか!」
「じゃあ、二つ目」
「声に出して言いなさいよっ!」
「煙草は二十歳から」
「よくできました。
私はね?友達として、幼なじみとして、啓輔には退学になってほしくないのよ。
分かるでしょ?」
「はいはい。よーく分かりましたよ。
で?俺んとこに来たってことは、もう、祥也の所には行ったんだろ?」
「行ったわよ。もう、最悪」
「アイツ、またヤってたのか?」
「そうよ。
なんなのよ、廊下まで声が漏れてたわ。普通、学校でする?」
「まぁ、アイツだしな。
……ん?祥也は、煙草吸ってないだろ?何の用で行ったんだ?」
「……無理矢理って言えば分かる?あまり口に出したくないのよ」
「そういうこと、か。」
「そのことなんだけどさ。ケイ、アライって知ってる?」

