◆……
「………千紗、何持ってるの?」
「ん?あぁ、……傘」
「なんで?」
「タクに一番簡単な護身術みたいなの教えてもらったのよ。
傘があれば、相手との距離もはかれるしね」
「傘を持ってる理由も分かったし、タクにそういう事聞いたのは良いことなんだけどさ。
………俺で試そうとしないでくれる?」
「あら、気づいたの?」
「当たり前だろ?
傘の尖った一番危ないところ突き付けられてるんだから」
文句を言っている雄太郎の腹部に突き付けられているのは、直径1センチ、長さ7センチほどの銀色の棒。
試したい、という気持ちからこの行動に出たのだが、試す前に拒まれてしまった。
「残念ね」
「まっ、千紗が傘で俺を突こうとどっちみち俺が勝つんだし」
………何よ、その強気な態度。
すごく腹が立つんだけど。
再び雄太郎の腹部目がけて銀色の棒を素早く突き付ける。
「ご、ごめんて。
ほ、ほら、危ないからね、ねっ!」
「しょうがないわね」
私の言葉に安心したのか、肩の力を抜く雄太郎。
「ふーっ。
それで?どこから潰してく?」
雄太郎の手にはさっきのリストが握られている。
どこからってねぇ……。
「出来損ないの幼なじみからでしょ」
「出来損ないねぇ……」
「雄太郎……楽しみね」
さぁ、行きますか。
あの出来損ないの幼なじみのところへ―――

