「美羽子ちゃん辞めちゃうの?」

「辞めるって学校をよね?」

「何?なんかのドッキリ?」

「新しい顧問は誰になるんだ?」

 それぞれ言いたいことを言っているが、タクだけは少しっていうかだいぶズレている気がする。

「一度にしゃべったら分からないじゃない」

 相変わらず幸せそうな雰囲気を漂わす村上先生は、私達を見てニコニコしていた。

「美羽子ちゃんなんで? 学校お休みじゃダメなの?」

 ミドリは“美羽子ちゃん”と呼ぶほど村上先生を慕っている。
 だからこそさっきの言葉は、衝撃的だったのだろう。

 ミドリの声は、擦れていた。

「主人が心配性なの。自宅と学校が離れてるから車で来てるんだけどね……。『妊婦に運転させたくない』ですって………」

 少し困った表情の中に「そんなところも好きなんだけどね」が含まれている感じがした。

「はいはい。このままだと惚気になりそうだから……。 で、いつ?学校辞めるの?」

「まぁっ!少しくらい惚気させてくれたって………、んもぅ。 えぇっと、1月いっぱい」

『はぁあぁぁあっ?!』

 本日二度目の絶叫。