いつも冷静な卓也くんでさえ、慌てているように見える。

 それほど、俺が千紗と帰らなかったことが問題なのか?

 ざわざわと胸が騒ぐ。

「……っ。ちぃ……出ないよぉ……」

「かけ続けろ!!」

「タクっ。探した方がっ」

「ああ。分かってる。でも、待て」

 卓也くんが眉間にしわをよせているのを見た俺は、目の前の腕を掴んだ。

「雄太郎、千紗がどうした?」

「それはっ………」

「雄太郎っ!!」

 ぱっと視線を落とした雄太郎は、「ごめん、言えない」と震える声でそう告げた。

 言えない?

 この三人が、こんなに焦っているのを見てるのに、その理由を話してくれないのか?!

 ドンッと鈍い音がしたと思ったら、雄太郎が床に倒れていて。

 気が付いたら俺は雄太郎を殴っていた。