気持ち悪くて、怖くて、泣き出しそうな気持ちをグッと喉の奥へと押し込んだ。

 負けないんだから。

 強い意志と共に、唇を噛みしめ握り拳を二つ作った。

 そんな私の意志を見透かしたのか、背中の生暖かさが消え、その代わりにおもいっきり壁に背中が当たる。

 痛みに顔を歪めている隙に、両手を頭の上で拘束された。

「何すん――っ!!」

 睨み声を上げようとする私の唇を奪う。

 嫌でも口の中に入ってくる、ざらついた気持ち悪い舌が口内を舐め回す。

「……いっ!?」

 ガリッとその舌に歯を立てた。

 素早く私から顔を離した佐野の口からは、少量の血が滴れている。

 私の両手を片手で押さえつけ、空いている手で口元を拭う佐野。

「何してるの?痛いんだけどな」

「噛んだのよ、悪い?私は、付き合ってもないヤツとキスはしない性分なの。勘違いしないで」

「勘違いしてるのは千紗。僕たちは付き合ってるんだよ、4年もずっと。
ねぇ、千紗。この身体、躾なくちゃダメなのかな?」

「ふざけないでっ。何でアンタに躾られなくちゃならないのよ!」

「僕に逆らうから」

「――うっ!!」

 ずしりとした重さが腹部を襲う。