まったく気付かなかった俺も俺だけど、何考えてんだ、このお嬢さん。
「でも、まさか自分の妹が、こんなちんちくりんのことが好きだったなんて。しかも、私と同い年よ?」
ふんわりと微笑んでるくせに、なんでそう口からは刺々しさ満載の言葉が出てくるんだよ。
まだ、無表情で言われたほうが傷つかないと思うんですけどっ。
「ちんちくりんじゃねぇし!一応、千紗より背は高いだろ」
「私より1、2センチ小さいじゃない」
「そんなの大して変わらな――」
「ホント、ちぃが不憫だわ。ヒールのある靴なんて履けないんじゃなくって?」
口元を手のひらで隠し、ふふっと笑う紗葉。
確かに、千紗がそういう靴を履いてるのを見たことないけど、それは、俺に気を遣ってるわけじゃない、と思う。
「……あっ。電話だわ」
帯の部分から震動する携帯を取出し、流暢なあちらの言葉で会話が繰り広げられる。
もちろん、フランス語でボンジュールぐらいしか知らない俺が紗葉の会話を聞き取ることはできない。

