「もちろん、サンを愛してるわ。
でもね。私をあの呪縛から解き放ってくれたのは英悟くんだったの」
「呪縛、ね。紗葉は解放されたかもしれないけど、後のことを考えなかったのか?」
「ちぃがそれに捕われるのは想定してたの。ちぃには私の二の舞になってほしくない、好きな人と結ばれてほしい。
だから、ちぃの恋を叶えてあげようと思ったんじゃない」
「………は?」
千紗の恋を叶えてあげようと思った、ってどういう意味なんだ?
もしかして、あの赤いチューリップ――
「あら、聞いてないの?貴方たちの許婚をでっち上げたの、私なのっ」
「はあぁぁっ?!!」
「私がフランスに行って、英悟くんとの婚約が正式に取り止めになってから、英悟くんのお陰で少しは融資してもらってたみたいなんだけど。
その融資が減っちゃったから、お母様ったら思い悩んで『何か良い方法はない?』って泣き泣き言われたものだから、つい」
「ついってなんだよっ。ついって!」
「ちょうどお母様だって、フラワーアーティストっていう新部門に挑戦する良い機会だったのよ。
まぁ、それは後付けで真意は『千紗のため』なんだけどね」
俺、もしかして気付かない間に紗葉の手のひらで、しかも綺麗に転がされたってわけっ?!

