「いずれは、女社長ね」
「そうかもな」
「それで?涼ちゃんが会社継いでくれたおかげで、タツキに舞い込んできた縁談。どうするの?」
会社を継がなくて良くなったと安心している俺に舞い込んだのが、千紗との見合いだった。
千紗の母親は、フラワーアーティストとして名を揚げようとしていた人で。
化粧品のコマーシャルで生花とかを使用できるんじゃないかって考えた千紗の母親。
で、商談やら自分を売り込むのが面倒だったからか、手っ取り早い方法――つまり、大学生でフラフラしてる俺を捕まえたってわけ。
「どうするの?って言われても。理由が分からないから、どうも動けないんだよ」
「じゃあ、これから一緒に家に行く?」
「千紗に来るなって言われてるし、紗葉たちの険悪なムードに耐えられないと思う」
「険悪だなんて失礼ね。いたって穏和に決まってるじゃない?」
ふふっと男を骨抜きする上品な微笑みの裏にある、そのどす黒い感情が嫌なんだってっ!!
まぁ、当時資金繰りが悪いからって小学校に上がる前の紗葉に許婚を押しつけ、その上坂桑家に融資するよう仕向けた両親への対抗心があるのは分かるけど。

