「ありがとう」
「いいえ。で、いつ帰ってきたの?」
「昨日の夜」
「子どもと旦那は?」
「ホテルにいるの。今日、ね。実家に行く予定だから、緊張してるみたい」
「そりゃあ、緊張するだろ。強行突破の結婚に言葉の壁だもんな」
「タツキは元気そうだけど、涼ちゃんは?」
「会社を継ぐってさ。父さんの会社に入社して、実力で出世中らしいよ」
俺の家は、最近株が上がってきた単なる化粧品会社。
長男の俺がその会社を継ぐのかと思っていたんだけど。
涼が『あたしは女だけど、タツキより先に生まれてきたの。だから、会社はあたしが継ぐ』の一点張り。
しかも、『実力のない上司の下で働きたくないって思うのが普通でしょ?』と、父さんに内緒で、しかも母さんの旧姓を使い、会社の面接を受けた。
涼は、見事面接合格。
しばらく、父さんに内緒でそのまま働いてたとか。

