「うそぉ。ちぃとケンカしちゃったの?大人気(おとなげ)ないわねぇ」
「ケンカはしてない」
「詳しく聞いてあげるから、お家に入れてくれるかしら?」
「はいはい。どうぞ、ご勝手に」
呆れる俺を手のひらで退かし、さすがいいとこのお嬢様という感じで靴を脱ぎ揃えて上がった。
仕草や歩き方など見れば、やはり坂桑家長女の品格があり、見ただけで厳しく教育されたんだなと分かってしまう。
「タツキ、日本茶が飲みたい」
「分かってますよ」
リビングのソファーに座るなり俺に日本茶を要求する紗葉。
まぁ、フランスから帰ってきて久しぶりの日本なんだから、日本を味わせてやるか、と急須に日本茶葉とお湯を落とす。

