「なんなんだよ」
重たい腰を持ち上げて、仕方なく玄関に行きドアを開ければ。
「Comment allez-vous?」
聞きなれない言葉に、千紗よりもワントーン明るい茶髪をアップにしているこの女。
淡いピンク色に桜吹雪をあしらった和服が目に入る。
「うわ……」
「あら。タツキって酷いのね。幼なじみの顔を見て、嫌そうな顔するなんて」
「俺の嫌そうな顔が見たくなかったら、ココに来ないでくださーい」
「別に、貴方に用はないの。私の可愛い妹に会わせてもらえない?」
「残念だけど、紗葉の嫌いな実家に帰省中」
おっとりとした話し方に、上品に笑う姿を盾にし、男という男を手のひらで転がしてきた女。
そう。
ふんわりとした風貌と性格を持ったこの女こそ、千紗の姉――紗葉だ。

