携帯のディスプレイに視線を落とせば、ちょうど12時。
どおりで腹が減るな、と納得しつつキッチンへ向かい冷蔵庫を開けた。
「……あっ。作ってあるし」
冷蔵庫には、ブランチらしきものがドンと真ん中に、威張るように置いてある。
それはどれも美味しそうで、口元が緩むのを感じながら、ダイニングに運んだ。
どこで覚えたのか、千紗の手料理はどれも美味しい。
中華料理だけが苦手なだけで、和と洋ならレシピと材料が揃えば作れるんだとか。
相当腹が減っていた俺は、ブランチをペロリと平らげ、食後のコーヒーをいれる。
ピーンポーン。
突然鳴ったチャイム音に、せっかく下ろした腰を持ち上げるのがめんどくさかった。
ただそれだけの理由で居留守を使うことにした俺は、静かにマグカップを――
ピンポンピンポンピンポンピンポン!

