あの頃を思い出すように窓際に立って、柔らかな日射しに目を細めた。
『私もタツ兄ちゃんのことが好き。だから、一緒に暮らす』
少しあどけなさが残った千紗の言葉は、脳にガツンとくるくらい嬉しかったのを覚えてる。
そういえば、付き合う前は『タツ兄ちゃん』って呼ばれてたんだっけ。
付き合うのに『兄ちゃん』って付けて呼ばれたくなくて『タツキ』って呼んでって頼んだなぁ。
『私、昔からタツ兄ちゃんのこと好きだった』
『あっ。また「兄ちゃん」って言った!』
『ふふっ。ごめんなさい』
『千紗、呼んで?』
『………タツキ』
千紗が恥ずかしそうに俺の名を呟いたのを聞いてキスをした。
その後は、二人で抱きしめ合ってって、あれ?
千紗は、“昔から”俺のことが好きだったのか?
でも、昔からっていつからだ?
4年以上前から俺のことが好きだったとすると、あの赤いチューリップの花束と葛城さんとの立ち話は一体……。

