保健室に着いてから、すぐにベッドに降ろされた。

「千紗、水飲む?ミドリちゃんは?」

「……うん、飲むわ」

 ペットボトルの冷えた水が、緊張を解してくれる気がする。

 タクは、ミドリを隣のベッドに座らせ、タオルケットを投げ渡していた。

「林、笠井にも水」

「はいよっ」

 ポンッと宙を飛ぶペットボトルを上手く片手でキャッチしたタクは、蓋を開けてミドリに差し出す。

「おい、飲めるか?」

「うん。あたしは、全然、大丈夫……」

 ちらり、と私に向けられたゆらゆらと揺れる瞳。

 佐野が、この学校に入学してくるとまでは、予想できなかった。

 精々、私の家や私を監視するくらいだと踏んでいたから、余計。

「私も大丈夫よ」

「ちぃ……」

「ねぇ、千紗。意地張ってないで、頼ってくれたっていいんじゃないかな?」

「……意地なんて」

「張ってるだろ。それに、迷惑なことがひとつ増えるくらい大したことない」

「…………」

 そこまで言ってもらっても、なかなか『うん』と言えないのは、私の性分。

 佐野は、何をするか分からないからこそ巻き込みたくない。