「千紗、ミドリちゃん、立てる?」

「うん。あたしは立てるけど……」

「しょうがないな。まっ、怒られるなら一緒に怒られようねっ」

 ニコッと効果音が出そうな笑顔を私に向けたあと、ひょいっと私の体が浮いた。

「ちょちょちょちょっ?!!」

「え?初めてだった?」

「べ、別に、初めてとかじゃないけどっ。何でこんな!」

「歩けないんだから文句言わないでよ。
タクー。今って保健室開いてるっけ?」

「たぶんな」

 曖昧な返事をするタクも、ミドリを俗に言うお姫様抱っこ。

 っていうか、ミドリなら可愛いから似合うけど、私もお姫様抱っこなんて異様じゃない?

「降ろしてよ」

「弟だけど我慢しなさい。
ほら。タクがミドリちゃんをお姫様抱っこしてくれたから、『生徒会が何かやってるぅ』で事が済むでしょ?」

「そうだけど……」

「いいから、いいから!すぐ保健室着くから、じっとしててね?」

 優しく諭され、おとなしくしているのはいいんだけど。

 リハのため体育館に向かう生徒からの黄色い声に恥ずかしくてたまらない。