今ここで。

 私が意識を飛ばしたりでもしたら、ミドリと佐野が二人きりになってしまう。

 それだけは避けたい、と力を振り絞り脚に力を入れる。

 でも、それだけじゃ、ダメ。

 こういうことって、最初が肝心なのよね?

「離して」

 なるべくはっきりとした口調で。

 さっき入らなかった手に力を入れて押し返した。

「……私はっ。私は、アナタなんて待ってない!!それに、私達は無関係っ。恋だの愛だの、そういった感情なんて一切ないのよっ!!」

 久しぶりに見た佐野の顔を、睨み付けながら早口で言った。

 こうでもしないと、負けそうなのよ。

 佐野は、少し驚いている様子を見せたけど。

 それは、一瞬、だった。

「千紗ってさ。僕を楽しませることが好きなんだね」

「そんなわけないじゃな――」
「よろしくね?生徒会長さん」

 ぞくり、と背中が粟立ち、顔をしかめる私を見て、気味悪い笑みを浮かべ、背中を向けた。