「ねぇ、千紗」
「……なに?」
「紗葉に、似てないってどういう――」
「忘れて」
「……は?」
「聞こえなかった?私は、忘れてって言ったわ」
聞こえなかったわけじゃない。
そうじゃなくて、そんなこと言われるとは思ってなくて。
聞けると思ってたから、言ってくれると教えてくれると思ってたから。
「……俺に言いたくない?」
「だからっ!忘れてって……、言ったじゃない……」
「そんなの無理に決まってるだろ。紗葉と千紗は違う。だから、何?」
「…………」
「千紗」
無視する千紗の背後に回り込み、棚に手をつき千紗を挟む。
ぴくっと肩が上下したのは、見なかったことにした。

