「じゃあなんで俺の迎え断ったんだよ?」
「日頃の疲れとかあるでしょ?
だから寝てるかなって思ったの…」
「あー。良かったー……
千紗が学校で好きな人できたのかと思ったよ。
まじ、焦ったー」
「そんなわけないじゃない。
私、タツキにしか興味ないもの」
私がタツキの立場だったら怒り狂うだろう。
なのにタツキは悲しげな表情をしながらも冷静さを保ち、私の考えをきちんと聞いてくれた。
もし、その私の考えがタツキにとって不利益なことでも決して私を責めるようなことはしないだろう。
精神的にもこの人はどこまで大人なのだろうか。
「………千紗――」
低く私の耳に心地よい声で呟くタツキはすごく色っぽくすうっと吸い込まれてしまいそう。
「なに?」
吸い込まれそうになりながら返事をすれば、タツキは犬とか猫とかの動物を前にしたような優しい笑顔を私に向けていた。

