家に着いてからもタツキは不機嫌なままで私と会話をしようともしない。

 私が夕御飯を作っている最中もいつもなら手伝ってくれるのに、今日は微動だにせずソファーに座ったまま。

「ねぇ……タツキ?」

 ここまで不機嫌になるとは思っていなかったため恐る恐るタツキに話しかけた。

 それでもタツキは、こちらを見ようとも口を開こうともしない。

 私が悪いのは分かっている。

 許婚とか婚約者の前に、私達は恋人だ。

 私もタツキもお互いのことを想っている。

 だからこそ私の行動は軽はずみだった。

「……はぁー」

 ため息が出たのと同時にお風呂が湧いたのを合図する電子音が鳴った。

「あのさ!お風呂入れるよ?」

 怒られることを覚悟しソファーに座っているタツキに近づき話し掛ける。

「……………」

 この距離でも無視するのかと思い顔を覗き込めばそこには、気持ちよさそうに眠っているタツキの姿。

「……うっ…ウソー!」

 力が抜ける感覚にとらわれた私は、その場に座り込もうとしたが右腕が引っ張られそのまま柔らかい衝撃が背中を襲った。