「フランスへ行くの」
彼女はそう言って、僕の前にチケットを置いた。
「なんで!?」
僕は真っ先にそう口にしていた。それが単なる観光なんかじゃないことは、なんとなく感じた。彼女は目を伏せ、コーヒーを口へ運ぶ。店内にいる他の客の会話や、食器の触れる音がやけに耳障りに聞こえた。