知っていたかった。 どんな些細なことでも。 どんなにバカみたいなことでも。 あたしはクラスの高橋を知ってる。 どんな風に授業を受けて どんな風に居眠りをして どんな風に笑うのか。 あたしは部活での高橋を知ってる。 練習で汗だくになって 試合で負ければ悔しがって 勝てば…笑うんだ。 だけど、そんなたくさんの高橋の笑顔よりも由美が見ることができるたった一つの笑顔の方が何倍も価値があるようにあたしには思えた。 でもそのたった一つの笑顔は、絶対に。 −−あたしじゃ見れない。 .